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訪日外国人に対する医療対策

訪日外国人が増加する中で、大きな課題となっているのが「医療対策」です。言葉の壁があるために受診する側も治療する側も問題を抱え、時にはトラブルに発展します。そんな医療対策の現状について紹介します。

訪日外国人を受け入れる医療機関

訪日中に体調不良で医療機関を受診する外国人は全体の約4%いると見られています。パーセンテージでは少なく思えるかもしれませんが、2016年の訪日外国人は約2,404万人ですから約100万人いる計算になります。

ただし観光庁の調べによると、外国人を受け入れる基準を満たしている医療機関は2017年現在でわずかに900程度しかありません。しかも地域的な偏在があり、都心部では充実している反面、岩手県・山梨県・三重県・高知県のようにひとつしかない県もあります。また関西は訪日外国人の数に比べて不足気味です。

人気の観光地でありながら該当の医療機関まで500㎞以上離れているところもあります。その結果、重症にもかかわらず市販薬で凌ごうとする訪日外国人もいます。今後、年間の訪日外国人の数が3,000万、4,000万と増えていく中で受け入れる基準を満たす医療機関を増やすことが急がれるでしょう。

訪日外国人の医療費や保険の問題

海外で治療を受ける時は公的な健康保険が使えないため、実費を100%支払わなければいけません。万が一に備えるため、旅行保険に加入するのが一般的です。日本なら保険会社がラインナップしていたり、クレジットカードに付随していたりするでしょう。

ところが訪日外国人の3割がこうした旅行保険に加入していません。時には未払いのまま帰国して連絡が取れなくなるケースも頻発しています。具体的な被害額は調査中ですが、年間にして数千万円にも及ぶといわれています。

こうしたトラブルが発生するのは旅行保険の未加入だけでなく、コミュニケーション不足も挙げられます。言葉の壁があるために旅行保険の有無を確認できなかったり、治療費が100%自己負担になることを伝えられなかったり、病状を確認できずに過剰な治療をしたりするのです。

解決策としては、医療機関側でパスポートやクレジットカードのコピーを取って身元や請求手段を確保したり、各国の言葉に対応したマニュアルを作成したりする方法があります。保険会社でも訪日外国人向けの旅行保険を開発し、出発前や入国時に加入を促しています。こうした旅行保険はコールセンターが医療機関を紹介してくれたり、多言語でサポートしてくれたりするのが特徴です。

また自治体によっては未払いとなった治療費の一部を補てんする「緊急医療救済制度」を設けて、医療機関の負担を軽減しています。

医療を求める訪日外国人に向けた取り組み

観光庁では訪日外国人が安心して日本でも治療を受けられるように、いくつかの対策をおこなっています。たとえばガイドブックやチラシの作成です。観光関係者や各医療機関、訪日外国人が自由にダウンロードできるようにしました。

日本語の他に韓国語や英語、タイ語に対応しています。中国語は繁体(台湾向け)・簡体(本土向け)の2種類です。観光庁の基準を満たしている医療機関のリストも同様にダウンロードできます。こうした情報をまとめたポータルサイトも複数の言語で作成しています。

また厚生労働省では現在NPOやボランティアに頼っている医療通訳の育成に力を入れる方針です。教育体制を確立させるためにカリキュラムやマニュアルを充実させ、今後の訪日外国人の増加に備えます。

まとめ

現状では年間約100万人の訪日外国人が日本の医療機関を受診しています。急速に訪日外国人が増加していながら、受け入れ基準を満たしている医療機関が少なかったり、意思の疎通がうまくいかずトラブルになっているのが課題です。旅行保険の加入を促したり、サポートを多言語に対応させたり、医療通訳を増やしたりするなど官民一体となって対策を急いでいます。