観光庁の調査によると2017年7月から9月までの訪日外国人の旅行消費額は1兆2305億円でした。2015年の爆買いブームのピークを上回り、さらに伸びようとしています。どこの国の訪日外国人が、どのような目的で消費しているのでしょうか。
インバウンドの1人当たりの消費額について
同じ調査で1人当たりの消費額は165,412円という結果です。これには旅行中に日本国内で支払った分とツアー代の中から日本の収入になる分が含まれています。国別に見ると1位はベトナムで259,749円、2位が中国で238,385円、3位がフランスで235,068円、以下スペイン、イギリス、ロシアが20万円超えです。
特筆すべきは前年比で、ベトナムは60.5%増と他国に大きく差をつけています。これに客数を掛け合わせた訪日外国人旅行消費額の前年比は118.1%で、唯一倍以上の伸びを見せているのです。
爆買いブーム以降頭打ちになった中国に代わってベトナムの消費額が伸びているのは、滞在日数の長さが影響しています。最低でも4日以上、1人当たりの平均は観光やレジャー以外の業務目的も加えると36.6日です。近年ベトナムからの技能実習生が増えており、その家族が長期滞在していると考えられます。
今後こうした訪日外国人がリピーターになれば、さらなる消費額の増加を期待できるでしょう。公用語はベトナム語ですが、若年層を中心に英語教育が浸透しているのでインバウンド対策は立てやすそうです。
インバウンドの消費額は何に使っているのか
ではインバウンドの消費額を何に使っているのか同じ調査で見ると、ベトナムや中国は圧倒的に買物が多いですが、ドイツやイギリスは宿泊費に重点を置いています。ロシアは娯楽、スペインは交通手段など国別にお金の費やしどころが違うようです。
品目別では菓子類の購入率が全体的に高く、他の食品や飲料類と共に6割を超えています。続いて医薬品、化粧品の順で、かつて爆買いの象徴だった家電製品や時計などの高級品は2割未満しかありません。せいぜいベトナムや中国で若干比率が高いくらいです。この2ヶ国をはじめ、アジア諸国はファッションにも高い購買意欲を持っています。
こうした購入品目の変化に伴い、購入場所もかつての百貨店やデパート、空港の免税店からコンビニ、ドラッグストア、スーパーマーケットへと移行しています。いずれもこの数年で免税や多言語対応などインバウンド向けサービスが強化されたところばかりです。
ただし「満足度」ではどの国もファッションが高く、続いて医薬品で、菓子類はそれほどでもないため、今後リピーターの割合が増えれば傾向は変わってくるでしょう。
インバウンドの消費額の過去と将来の推移
インバウンドの消費額は2015年の7月から9月にかけて初めて1兆円を突破しました。わずか1年で倍になったのです。そして2017年になって再び爆買いブーム以上の伸びを見せています。今後2020年の東京オリンピックに向けて日本が目標とする年間4,000万人の訪日外国人が実現すれば、さらなる上昇を見込めそうです。
かつて訪日外国人は欧米諸国やオセアニアが中心であり、やがて韓国や香港、台湾などからの来訪が多くなり、近年では中国といった具合に消費の牽引役が推移してきました。そして2017年はベトナムをはじめ、タイやマレーシア、インドなど東南アジアからの訪日外国人が増加しています。
今後は東南アジアを中心に消費額が増加するでしょう。そのためには、多くの国で信仰されているイスラム教の食事(ハラール)や礼拝(サラート)への対応が急がれます。また現在の欧米諸国がそうであるように、リピーターが増えるにつれ宿泊やレジャーなどの消費額が買物を上回るかもしれません。
まとめ
インバウンドの消費額は第二のピークを迎えようとしており、その主役も中国から東南アジアへと推移しつつあります。品目では菓子類や医薬品などコンビニ、ドラッグストアで購入できるものが中心です。今後も他の国からの訪日外国人やリピーターの増加に伴い、こうした消費額の動向は大きく変化するでしょう。