訪日観光客の総称として広まってきた言葉、インバウンド、最近は田舎にも海外からの観光客が訪れるようになり、インバウンド効果を利用することは、日本の観光地には欠かせない要素になっています。
では、実際、インバウンドは現在どの程度、日本経済に恩恵をもたらしているのでしょうか?
数値で見るインバウンド効果
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【入国者数】
H29年7月の訪日外国人数は2,681,500人、前年同月2,296,451人、16.8%の伸びとなっています。(数字は暫定値 日本政府観光局より引用;http://www.jnto.go.jp/jpn/statistics/data_info_listing/pdf/170816_momthly.pdf
伸び率は3か月連続2ケタを更新、7月は単月としては過去最高値を記録しています。
多くの国で、7月に休暇が多いこともありますが、それに合わせ、地方空港が、アジアをメインに路線開拓、合わせてプロモーションを行った効果が出ているよう。大型クルーズ船での観光定着も理由の1つに上げられます。
また欧米からの観光客が多いことから、こちらも観光プロモーションが定着していると言えそう。ただし欧米からの旅行客数は、自国の経済状況に左右されている数字も見られ、単純に日本側の事情だけでは考えづらいものもありますが、一定の伸び数をキープしていることから、プロモーション効果はあるとしていいのではないでしょうか。
【総消費額】
平成29年度4~6月期の速報値では
(観光庁より引用http://www.mlit.go.jp/common/001194019.pdf
1位、中国3,682億円(シェア率34.2%)
2位、台湾1,536億円(同14.3%)
3位、韓国1,177億円同10.9%
4位、香港852億円(同7.9%)、
5位、米国767億円(同7.1%)の順となり、この5か国・地域で全体の
74.4%を占めています。前年同月で見ると、香港が米国を抜き、5位から4位へ、香港、韓国、台湾、中国ともに金額が上がっています。
反日ニュースも多いですが、あまりそういった影響は見られず、飛行機や船といった、直行便の路線開拓と、PRが功を奏した結果になっています。
【1人当たりの消費額】
ただし1人当たりの消費額は14万149,248円で、前年15万9,933円に比べ6.7%減少、1人当たりの消費額はこの2年(H28,29年)は前年割れする傾向にあります。近年の消費額のピークがH27年7~9月の18万7千円となっており、爆買いニュースが流れた頃と一致、日本の商品が過剰に買われていく状況が、落ち着いた、ということでしょう。
国別消費額(上位5か国)
国別では、
1位、英国25万1千円
2位、イタリア23万3千円、
3位、中国(22万5千円)
4位、オーストラリア(21万3千円)
5位、フランス(21万2千円)
と、欧州、オーストラリアが抜きんでる格好に。英国は前年比36.2%、イタリア25.2%を記録していますが、これは単純に欧州経済事情に左右された部分も大きいようです。ただし、欧州の場合、旅行に対して求めるものが「モノより、コト」という傾向にあり、そのため消費単価が上がっているとも思われ、その傾向が、中国にも出始めているとみていいでしょう。
消費項目(上位5位)
1位、買い物 38.5%
2位、宿泊費 27.5%
3位、飲食費 19.4%
4位、交通費 11.3%
5位、娯楽サービス代 3.2%
飲食費、宿泊費がやや低下傾向に、前年比では韓国、英国、イタリアが大きな伸びを見せています。特に欧米で宿泊料金が増加しています。
クルーズ船の計算がどこに含まれるのか、解りませんが、クルーズ船の場合、パッケージになるため、宿泊単価が下がった可能性があります。またアジア勢は、直行便など、空路整備が増加の理由と考えられ、良くも悪くも気軽に来て帰ることが可能、滞在時間自体が短めになったのではないか、とも、考えられます。
ちなみに、日本人の国内旅行消費は、H29年4~6月期で宿泊0.9%増、日帰りー3.5%となっており、こちらは、豪華列車などの影響もありそう。
インバウンド効果の出た業界は?
みずほ総合研究所が2016年2月、発表したところによると、インバウンドの影響で小売、飲食、宿泊業界の需要は増えたが、非正規雇用も多く、賃金に結びつかず、供給が少ないという結果に。
(2016、みずほ総合研究所より引用 https://www.mizuho-ri.co.jp/publication/research/pdf/insight/jp160217.pdf#search=%27%E3%82%A4%E3%83%B3%E3%83%90%E3%82%A6%E3%83%B3%E3%83%89+%E9%9B%87%E7%94%A8%E5%BD%B1%E9%9F%BF%27)
同じく2016年2月の日本政策投資銀行が発表したデータによると、一定の需要がある「買い物」の中でも化粧品、トイレタリー、医薬品、服などが、近年人気になってきています。日本でも品質に定番がある、お手頃価格の服飾ブランド、化粧品、ちょっとした工夫のある雑貨など、日本で人気の品が、そのまま海外での人気につながっているのではないかと思われます。
また2017年2月の発表では、飲食業、宿泊施設や従業員の確保は厳しく、伸びている反面、賃金アップや、シーズンを通しての利用など多様化など改善点が多い、と言えましょう。(日本政策投資銀行より引用:http://www.dbj.jp/ja/topics/report/2016/files/0000026298_file3.pdf#search=%27%E3%82%A4%E3%83%B3%E3%83%90%E3%82%A6%E3%83%B3%E3%83%89+%E5%8A%B9%E6%9E%9C+%E6%A5%AD%E7%95%8C%27)
雇用が期待される業界は?
みずほ総合研究所の発表によると、インバウンドの数字が雇用に反映されるまで1年強かかるという結果が見られます。(上記参照)
宿泊業界、飲食業界は、続需要があり、供給不足でもあるため、数と種類の両方が増えていく可能性が大きい。
また化粧品、医薬品などのドラッグストア関連の消耗品も、日本商品の場合、品質が良く、また痒いところに手が届くような生活用品も豊富、引き続き、人気を維持するでしょう。
服飾、雑貨は、定番ブランド品の質は落ちないと思われる代わりに、海外ブランドとの価格競争が気になるところです。
また、今後は体験型観光が人気になると予想されています。
そして、日本政策投資銀行の宿泊データに「日本旅館や民泊の希望」が出ていること、現在は東京、大阪、京都などインバウンド効果が限定されていることから、大都市からアクセスが良く、ネットや外国語の案内を完備した、地方ならではの体験ができる町での宿泊、イベント参加に、人気が集まっていくと思われます。それに伴い、買い物も「この土地でしか買えない」もの、体験の延長にあるものが増えていくでしょう。