2015年には流行語大賞にも選出された「爆買い」。訪日観光客が、日本の量販店などで大量にモノを購入することを指している言葉です。特に、近年増えてきた中国からの観光客の爆買いは、目を見張るものがありました。しかし、爆買いが流行した2015年と比べると、現在では爆買いの傾向が変化してきています。現在の爆買いにはどのような傾向があるのか、インバウンドが日本で消費する「モノ」「コト」に注目して解説していきましょう。
爆買いは終わったの?買物をしている客は何を買っているのか
インバウンド、特に訪日中国人でよく見られた爆買い。ブランド品や電化製品を大量に買い求める訪日外国人の様子が記憶に新しいという人も多いでしょう。日本では、偽物を買わされるリスクも低いですし、日本製の高品質な電化製品を比較的安く手に入れることもできます。そのため、2015年ごろにはブランド品や電化製品を爆買いするという訪日外国人が多かったのです。
しかし、爆買いのおもな主人公であった訪日中国人の1人当たりの消費額は年々減少しています。2016年における訪日中国人の1人当たりの旅行支出は、2015年と比較すると-18.4%。ただし、2016年の訪日中国人の数は約640万人で2015年から27.6%も増加しています。訪日中国人の数が増えているにも関わらず、消費額が低下しているというわけです。
この傾向は訪日中国人に顕著にみられますが、そのほかの国でも、大なり小なり日本での観光で消費する金額が低下してきています。これは「爆買いの終焉」を意味しているのでしょうか。
答えは「NO」
確かに訪日外国人が日本観光で消費する金額は低下してきていますが、それは爆買いの対象が変化したことが理由です。先述したとおり、2015年ごろはブランド品や電化製品の爆買いが多かったのですが、現在では医薬品や健康食品、化粧品などの爆買いが主流になっているのです。
そのため、爆買いの場といえば以前はブランド品を扱うお店や家電量販店でしたが、現在ではドラッグストアやコンビニがメイン。ドラッグストアでは高品質な医薬品や健康食品、プチプラ化粧品などを爆買いし、コンビニではおもにお菓子を大量購入するという訪日外国人が増えているのです。
買物などの「モノ」消費から体験などの「コト」消費へ
爆買いは購入対象を変えて今でも続いていますが、やはり爆買い市場は縮小傾向にあります。それは、インバウンドの興味の対象が、買物などの「モノ」消費から体験などの「コト」消費へと移り変わりつつあることが大きな原因です。
訪日外国人が日本旅行で消費するものの対象が、モノからコトへと変化したおもな理由として考えられているのは、「リピーターが増えていること」。2回以上日本を訪れたことがある訪日外国人の数は、訪日外国人全体の6割を占めているともいわれています。なかには10回以上も訪日しているという人もいるほど。このような人たちにとっては、「爆買い」という外国人観光客が主体となるイベントではなく、日本人の日常の暮らしや文化を体験できることのほうが魅力的なのです。
インバウンドの人気を集めている体験として、そば打ちや和菓子作り、滝打ちや座禅の修行体験などが挙げられます。いずれも、日本に来なければなかなか体験することができない、「非日常」の体験。かつて爆買いで来ていた訪日外国人も、この非日常を求めて日本を訪れることが多くなっているのですね。
インバウンドが体験型に変化していく際の対策
爆買いという「モノ」消費から、非日常の体験という「コト」消費へと変化しているインバウンドの観光目的。日本国内の各観光地も、この変化に柔軟に対応していかなければなりません。
例えば、日本で最初に訪れるという人も多い日本の古都の1つ京都では、着物を着て舞妓さん体験ができるなどといったプランが用意されています。また、雪が降らない国や地域からの観光客にも人気の体験として、インバウンド向けのスキーツアーなどもあります。
意外なところでは、日本中央競馬会(JRA)が企画するインバウンド向けの観光プラン。JRAは、日本の文化としての競馬を体験できる企画を打ち出しています。「モノ」消費から「コト」消費へと変化したことによって、世界遺産や重要文化財がある街や爆買いができる都市部以外の地域や企業にも、インバウンド消費の恩恵を受けることができるチャンスが生まれているというわけですね。
日本人にとっては当たり前の習慣や文化でも、日本を訪れる外国人観光客の目には新鮮に映るもの。自分たちの生活を見直して、日本独自の文化や習慣を再発見し、インバウンド消費に活用しましょう。
まとめ
インバウンドが「モノ」消費から「コト」消費へと変化してきた近年では、爆買いを期待するだけでは、日本国内での外国人観光客による消費は増えません。訪日外国人のリピーターを増やすためにも、さまざまな体験型観光プランを用意しておく必要があります。歴史が長く、各地域にさまざまな文化や習慣がある日本。その歴史や文化・習慣は、すべて観光資源といっても過言ではないでしょう。日本の魅力を再発見し、外国人観光客にもその魅力を伝えていきましょう!